論文の備忘録

~神経内科・臨床遺伝学を中心に~

IRBD:シヌクレイノパシー発症リスク

Annals of Neurology誌に掲載された論文です。

特発性REM睡眠行動異常症‐IRBD(シヌクレイノパシーを発症していない)患者が、短期間のうちにシヌクレイノパシー(パーキンソン病など)を発症するリスクを決定するために、ドーパミントランスポーターイメージング(DAT scan)の有効性を検討した論文を拝読しました。

87名の“ポリソムノグラフィー検査にて確定診断された”IRBD患者さんを対象にDAT scanを施行し、結果は20名のコントロールと比較しています。コントロール群の2SD以下の集積低下があった場合に、集積異常がありと判断。IRBD患者は5.7 ± 2.2 年間(range, 2.6-9.9)経過観察されています。

結果ですが、51/8758.6%)名のIRBD患者が、DAT scanで集積低下を示していました。このうち25名(28.7%)が、画像撮影の平均 3.2 ± 1.9年後に、臨床的にシヌクレイノパシー(11名がパーキンソン病13名がレヴィー小体病、1名が多系統萎縮症)を発症しました。カプランマイヤー生存曲線が図示されていますが、有意にシヌクレイノパシー発症リスクの上昇が見られています。 (3年後20% 6%5年後33% 18%)

ベースラインでDAT集積低下があったIRBD患者のうち、シヌクレイノパシーを発症した群としなかった群の比較です。被殻におけるFP-CITの取り込みは前者が25%以上の低下が認められました。

5年間のフォローアップ終了時点での検討です。DAT scan 75%の感度、51%の特異度、44%の陽性的中率、80%の陰性的中率、尤度比1.54で、シヌクレイノパシー発症を予測していました。

睡眠医学はなかなか注目されていない分野ですが、病棟業務にかかわる全ての医療従事者が困ることの多い臨床課題が多いですよね。もっと勉強しなければとおもいました。今回のDATスキャンやポリソムノグラフィーを全ての患者さんに実施するのはコスト的な問題があるでしょうが、パーキンソン病・レビー小体病の発症予備軍をピックアップし、発症前介入試験などを行う際には有用な検査法の一つになるのかと期待しています。

 

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